新しい法律制度の記事一覧

新しい法律制度(10)高齢者虐待防止法

高齢者虐待防止法

平成18年4月「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」が施行された。

この法律ができた背景には、全国規模の調査結果がある。

高齢者に対する人権侵害は、閉ざされた環境の中で発生するために発見が遅れ勝ちになり、深刻な人権侵害を招かないためには、侵害の初期に発見する体制作りが必要不可欠であることが明らかになったのである。

虐待という言葉の響きは何か特別な邪悪な行為を連想させるが、この法律の定義では、普通にごく日常的に起こりうる人権侵害行為を虐待として定義している。

暴言・威圧・侮辱・脅迫などの心理的虐待、暴力行為などの身体的虐待、高齢者の財産の不当処分や不当受益などの経済的虐待、高齢者に食事を減らし衰弱させることや養護を故意に怠る虐待(ネグレクト)及び性的虐待がこの法律における虐待である。

この法律は、国・都道府県・市町村に対して、高齢者の権利を擁護するための施策について義務を課し、福祉に関わる職に就く者にも、高齢者虐待の早期発見やその防止への協力を要請している。

司法書士もその役割を担う専門家の一員であり、高齢者虐待防止を実現するために、種々の研修を行い始めているが、家族や介護職員などの介護疲れ等の実態を知るにつけ、この問題の深刻さを痛感している。

司法書士 山口達夫

新しい法律制度(9)

バリアフリー新法

最近はどこの駅でもエスカレーターが設置されて、高齢者だけでなく、若者にもたいへん便利になっている。

平成18年12月に施行された、いわゆるバリアフリー新法(高齢者・障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)によって、それまでの、ハートビル法と交通バリア法が統合・拡充された。

高齢者・妊婦・乳幼児連れ・病人・障害者等に限らず,全ての人が安心して快適に外出できるために、道路・公園・公共交通機関・建築物・信号機等のバリアフリー化を推進するための法律である。

その結果、道路行政をみても視覚障害者誘導用点字ブロック設置や幅広い歩道、歩道の段差解消など、目に見えて改善が進み始めている。

2025年には65歳以上の人口が全人口の25%を超える超高齢社会となる日本の現状を考える時、このような環境整備は益々強力に推進する必要があ る。近年は、健常者でない人が特別なのではなく、障害の可能性は誰もにあり、誰もが高齢化することから、これらの人々の存在が社会にとって当たり前である との認識が進んできた。この考え方を基礎にしているのがノーマライゼーションである。

また、特に高齢者や障害者等が使い易い設備を、その特性に合わせて個々的に対応することは、膨大な予算を要するだけでなく差別意識にもつながる。

そこで、健常者も含めて誰でもが使い易いような工夫を施す、ユニバーサルデザインが要請される時代になってきたようだ。

司法書士 山口達夫

新しい法律制度(8)

消費者保護法

消費者保護法制が整いつつあり、契約の解除等の交渉が可能な時代になり始めた。2つの例で説明をしたい。

①田舎に一人暮らしをしている母を訪ねてみると、大型テレビが置いてあった。
母に聞くと、訪問販売業者がしつこくて断り切れずにクレジットで購入してしまったようだ。

②防水工事をしている家族経営の小会社が、訪問販売業者からFAXと内外線の電話設備を勧誘され、大手リース会社とリース契約を行い設備を導入した。
ところが、この設備が会社の規模に不相当な高品質であったために、業務で使うことはなく、騙されたとの思で一杯であった。

以上のような2つの事例でも、平成21年6月に改正された特定商取引法によって保護される可能性が生まれた。
特定商取引とは、訪問販売、通信販売及び電話勧誘販売による取引、エステや英会話などの継続的な取引等をいう。

①の事例は、「高齢者」に対する「訪問販売」による「クレジット取引」の被害の典型である。
クーリングオフができる場合が広くなったこと、一度断れば再勧誘が禁止されたこと等によって、契約解除と返品の可能性が高くなった事例である。

②の事例は、会社や事業者であっても、特定商取引法が全く適用されないのではなく、個人と同視できる場合には、適用を認めるべきであることが、通達 で確認され、しかも、販売業者との直接の売買契約でなく、リース契約という所有権が消費者に移転していない場合にも保護される可能性と交渉の余地が生まれ た事例といえる。

どうも納得ができない、騙されているのではないか、と思った場合には、消費者生活相談センターや法テラスあるいは司法書士・弁護士に相談することを勧めます。

司法書士山口達夫

新しい法律制度(7)

一般社団・財団法

人間以外でも、権利を得、義務を負うことができるものとして、法人組織があります。営利を目的とするものは、会社法によって株式会社等が設立できます。会社は、法律に定まった要件さえ満たせば自由に設立できます。これを、準則主義といいます。

営利を目的としない公益団体には、人の集団である社団法人と、財産を主体にしてこれを運用する財団法人があります。今までは、この社団法人と財団法人は民法法人といって主務官庁の許可が無ければ設立ができませんでした。

ところが、長い間にこの許可設立の弊害が目に余る状況になってきました。官僚が天下りするために、非常に多くの公益社団や公益財団を設立して、適当 な公益目的を唱えて、そこに官僚OBが天下りを行っていて、しかも公益であるからと、そこへ、国家予算を無駄にたれ流していたのです。

そこで、小泉内閣の最後の年である平成十八年五月二六日に、行政改革の一環として、官僚の関与をできるだけ押さえ「民間が担う公益」を推進するために、この法律を制定しました。

これによって社団法人と財団法人を準則主義によって、誰でも簡単に設立できるようになりました。

しかも、設立後に公益性の有無を認定するのは、監督官庁の手から離し、別の組織である公益認定委員会としました。そして、この公益認定が得られない場合でも、法人は存続し活動を継続することができます。

この法律の成立後も公益目的のNPO法人は存続しますが、共益目的の有限責任中間法人は一般社団法人に変更となりました。

財産のある方は、是非「民間が担う公益」推進のために、社団・財団を設立されん事を願う次第です。

司法書士 山口達夫

新しい法律制度(6)

映画盗撮防止法

立川に事務所を移転して慌ただしかった1年余りが過ぎて、最近は、時々立川シネマシティで流行りの映画を鑑賞している。当初驚いたことは、映画が始まる前に、黒いカメラでいかにも挙動不審の盗撮動作を表現した画面が必ず現れれることであった。

これは、平成20年8月30日に映画盗撮防止法が施行された結果、導入されたのではないかと思っている。

この法律により、新作映画が封切られてから、8ヶ月間に限り、私的使用目的であっても、盗撮を、懲役10年以下罰金1千万円以下を課す違法行為と位置づけた。私的使用を認めている著作権法の特例法である。

前述の画面は、観客に対し、盗撮を発見したら通報してもらうことを求めている。

この法律の目的は、海賊版による年間180億円とも言われる損害を防止し、映画産業の健全な発展に寄与することにある。高度な撮影技術とデジタル複 製技術の結合により、本物と間違えるほどの品質の海賊版が、甚だしくは、公開翌日には売られている現状は、これ以上、放置できないとのことである。

同様の法律がアメリカにはあると聞くが、中国にも求めたいと願うのは私だけであろうか。

司法書士 山口達夫

新しい法制度(5)


事業承継円滑化法

株式が公開されていない中小零細企業では事業主が死亡すると、相続税の支払いや遺産分割によって、事業が継続できなくなる場合があります。

このような場合、そこで働く従業員にとっては、就労の機会が奪われる結果となり、雇用の確保と技術や文化の承継面からも国家社会に損失を与えることになりかねません。

かといって、事業主が土地等の資産評価で計算される株式を事業承継者に生前贈与すれば、多額な贈与税又は相続時の清算課税が生じます。また他の相続人から遺留分を請求されることもあります。

これらの課題を解決するためには、税制と民法の遺留分規定の改正と、従業員が承継する場合には承継資金の融資制度が必要です。

そこで、昨年事業承継円滑化法が制定され平成20年10月に施行されました。

株式を相続人の承継者に贈与する場合、遺留分計算からこれを除外し、相続税も80%を減額します。

低利融資は日本政策金融公庫が当ります。 しかし、この制度は中小零細の事業を継続させ、雇用を確保することが目的ですので、適用には厳格な要件が定められています。

まず、財産管理会社や財産運用会社は除外されます。従業員は、80%以上の継続雇用が義務付けられます。承継後の事業継続も最低5年が必要で、その後も株式を売却すると遡って80%の減税措置が否定されます。

また、事前に法定相続人間での合意や、経済産業大臣の確認が必要です。相続発生時には事業承継の認定を受なければなりません。

事業経営者にとって相続問題は重要です。元気な内に司法書士や税理士に相談しておくことが必要です。

司法書士 山口達夫

新しい法律制度(4)

「振込め詐欺救済法」

最近東京司法書士会から犯罪口座として凍結された銀行名と口座番号の一覧表が送られてきました。A4で表裏3枚以上にわたり細かい字で、ビッシリと並んだ表を見る時、その数の膨大さに圧倒され、被害の深刻さを実感させられました。

振込め詐欺とは、オレオレ詐欺・架空請求詐欺・融資保証金詐欺・還付金詐欺の総称ですが、平成20年6月にこれら詐欺の被害者に対する被害回復のた めの法律が施行されました。正しくは、「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」といいます。

被害にあわれた方はまず警察に連絡して下さい。警察はこれが事実であれば、銀行・信用金庫・農協等の振込先の金融機関に連絡をします。銀行等はこの連絡等の情報により犯罪口座であると疑う場合は口座を凍結し、口座名義人が勝手に引出したり、解約することをできなくします。

この凍結口座は預金保険機構のホームページ上で公開されることになっています。

そして騙された人は振込先の銀行等に申出をすることで、分配金を受けとることができるようになりました。

因みに、預金保険機構とは銀行が倒産した時に一千万円まで保証し預金者の保護をするところです。

いづれにせよ油断大敵の時代です。お互い気をつけましょう。

司法書士 山口達夫

新しい法制度(3)


犯罪収益移転防止法

・麻薬等の犯罪で得た資金を、警察からの追及を逃れて、次の犯罪や株や土地の取引の資金に使うために、他人名義や架空名義の銀行口座をつくることで、犯罪性の資金では無いと見せかけることが、いわゆるマネー・ロンダリングです。

・これらの防止には、世界で一致した取り組みが必要で、約20年前に国連で国際条約が採択され、推進のための部会(FATF)も設置されました。

・この国際的な対応によって国際犯罪集団に大打撃を与える成果が得られたので、十年前からは、FATFは各国に対し、麻薬を含めた全ての重大犯罪に 対象を拡大することを求めてきておりました。.そこに生じたのが、2001年9月11日の米国同時多発テロでした。テロに対する資金の提供を防ぐという新 たな目的が加わり、FATFは各国に1千米ドルを超える現金送金には、本人確認義務を行うよう求めてきました。

・日本では、平成16年から銀行に口座開設時の本人確認を義務づける本人確認法を施行しておりましたが、さらに架空請求詐欺や振込め詐欺が頻発した ため、平成19年には、十万円を超えるATMの現金振込みを禁止する法改正を行いました。.現在の煩わしさの裏には、このような世界共通の課題や背景があ るわけです。

・昨年3月1日、犯罪収益移転防止法が全面施行されました。銀行だけでなく、不動産業や宝石商等と、弁護士・司法書士・税理士などの法律専門家に も、土地の売買や会社の設立、200万円以上の物品取引に関して、本人確認と7年間の記録保存が義務となりました。銀行以外でも本人確認が求められる時代 になったわけです。

司法書士山口達夫

新しい法律制度(2)

「貸金業法の改正」

多額の利益を上げる金融業者が蔓延する反面、暴利に苦しむ自殺者が年間八千人に及ぶ日本の現状を改善するために、平成十八年十二月に安倍信三内閣・塩崎恭久官房長官の大英断によって、改正法が成立しました。
貸金業者にとっては「驚天動地」の改正で、平成二十二年六月を目途とする完全施行期限までに、貸金業者は生存をかけて経営改革しなければなりません。同時に、利用者は簡便に借りることが困難となるため、個人破産等が急増する懸念が生じています。

改正法の中身は、
①ヤミ金の刑罰強化
②政府機関による総合的効果的な多重債務者救済措置の推進
③夜間だけでなく日中の取立行為の制限
④自殺の保険金で弁済させる契約の禁止
⑤一社で五十万円以上、総額で百万円以上の場合は、貸金業者に利用者の年収資料を取得する義務
⑥年収の三分の一超など返済能力を超えた貸付(資産がある場合は別)を禁止
⑦出資法の上限金利を二十%に引下げ、これを超える場合は金融業者に懲役刑、
との内容となっております。

現在でも、最高裁の最近の判例によって、利用者にお金が返ってくる(過払い金返還)か、支払うべき金額が激減する等が生じています。
借りたものは返すのが道義とはいえ、あまりに過酷な高利を座視できず、最高裁も苦渋の解釈を展開したのだろうか。この改正法により「借りる」事と「返す」事が調和され、遵法精神に痛みを感ずる事が減り、しかも自殺者が激減すれば幸いです。

日本司法書士会連合会副会長
司法書士 山口達夫
電話042-521-0888

新しい法律制度(1)

「総合法律支援法」

平成13年6月の司法書士改革審議会最終意見書において、その必要性が唱えられ、今は懐かしい小泉首相が、「司法を国民の手の届く処に」「すべての 市民が法的救済をうけられるように」と全国に司法ネットを張り巡らせ、紛争を抱えた市民に総合的な法律サービスを提供することを求め、平成16年6月にこ の法律が成立しました。

日本司法支援センターはこの法律によって設立された組織で、全国に50か所の地方事務所と10数か所の支部があり、市民の悩みに日々対応し、弁護 士・司法書士を紹介して無料の法律相談を行っています。愛称は「法テラス」と言います。地方事務所の一つである法テラス東京は、四ツ谷駅前にあり、近く は、京王八王子駅前のOAビル内に法テラス多摩支部が、立川駅北口約7分のコアシティビル内に法テラス立川出張所があります。

法テラスでは、さらに法律扶助や犯罪被害者支援を行っていますので、心配事がある方は、先ずは法テラスに電話をかけられることをお勧めします。電話は050-3383-5321 (多摩)、050-3383-5227 (立川)です。

親切な職員が窓口で対応し、適切なアドバイスのできる専門家を紹介しています。

私の立川の司法書士事務所では、昨年12月に総合法律相談会を実施しました。司法書士・弁護士・税理士・行政書士・が相談員として一緒に同席する方式をとりましたので、複合的な問題を抱えた方に特に好評でした。

今後も多くの法律専門家が力を合わせることが大切であると強く実感した次第です。